旅を終えて


出発の2週間前、下の奥歯が痛むので近所の歯医者へ行きレントゲンを撮り診てもらった。
隣りの親知らずの歯(歯茎の中)が横向きで奥歯を刺激しているとのこと。先生に2週間後にスウェーデンへ出発し1カ月いると話すと抗生物資と痛み止めを6日分くれた。
抗生物資は痛くなったら飲み痛みがなくなっても3日分は必ず連続して飲むことと念を押された。親知らずは大きな病院の口腔外科で手術するしかないとのことで都立府中病院への紹介状をもらった。
出発の1週間前に都立府中病院へ行き手術の予約(帰国後)をする。病院の先生に1カ月間スウェーデンへ行っていると言うと、口内洗浄液も持った方がよいとのことで薬局で3本購入した。
最悪の場合、スウェーデンで親知らずの歯を抜くことになると覚悟し出発した。スウェーデンで2〜3度軽い痛みを感じたが幸いに薬を飲む程でなく無事帰国出来た。口内洗浄液は寝る前に毎晩使った。
(帰国後に親知らずを抜いたが1カ月位頬が腫れて大変だった)

着物の紙人形
いつも行く理容室(三鷹)から千代紙で作った着物を着た少女の人形(高さ約10cm)を何個か前にもらったことがあった。この人形は、理容室のオーナー(女性)の義理の母親(大正2年生まれ)の手作りのものだ。
出発前に理容室で散髪してもらった時、スウェーデンを旅行中にこの人形をプレゼントしたいので何個かもらいたい旨お願いした。 10個位と思っていたら30個位もいただいてしまった。
この人形を旅行中にお世話になった人にプレゼントし大変喜ばれた。

旅の後半に会ったスウェーデン人のサイクリスト曰く「お前の今までの体験は面白い! 日本へ帰ったら本が1冊書けるんじゃないの」
このホームページでは容量の関係で体験した全ては書かなかったが、確かに本が書ける位の様々な体験をした。


雨の中を走る時は辛いのでスウェーデンへ来て作った歌をいつも歌った。
1番:漕いでれば 漕いでれば いつかは着くんだよ〜 あの町へ この町へ いつかは着くんだよ〜 
2番:雨降るな 雨降るな 雨よ降らないでくれ〜 そうすれば そうすれば 素敵なサイクリング〜 
3番:ゆっくりでも ゆっくりでも 漕いでさえいれば〜 いつか着く いつか着く あの町へ〜
軽快でテンポのよいメロディーをつけて何度も歌い自分を元気づけた。

雨の中では歌う以外に大好きなラーメンを思い浮かべ気分転換をした。
湯気の出ている熱々のラーメンを思うことだけでも幸福だった。醤油ラーメン、味噌ラーメンそれに塩ラーメンをそれぞれ考えてどのラーメンから先に食べるか悩むが、やはり醤油ラーメンとなる。当然、汁は全部飲み干す。その後は温泉に浸かりのほほんとする。
そんなことを考え一人でにんまりとして雨の中自転車を走らせていた。

YHで知り合った人たちと世間話の後に多くの人に聞かれたことは年令と仕事であった。
年令:スウェーデンを自転車旅行していることへの先入観もあってか、50前後と言う人が多く60才と当てた人はいなかった。私から彼らにヒントを与える「4人の孫がいるおじいちゃんだ」、彼ら「???」。私「第2ヒント、一番上の孫は10才」、彼ら「お前のヒントでさらに分からなくなった」。
仕事:一般的に日本人は長期の休みを取らない(取れない?)と思っていて、1カ月かけてスウェーデンを自転車で旅行しているので仕事は何だとなる。
私「60才で定年退職し自由」
彼ら「前の仕事は?」
私「親会社はスウェーデンにあり東京事務所に勤務していた」
彼ら「どういう会社?」
私「ヘルシンボリの北のヘガネス町にあるヘガネスという会社だ」
スウェーデン人の中にはヘガネス陶器を知っている人もいて「日本で陶器を販売していたのか」と聞いてくる。
実際には陶器でなくヘガネス社で製造した鉄粉を輸入し日本のお客さんに営業していた。
スウェーデンにいてスウェーデン人にヘガネス鉄粉(還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、合金鋼粉)とその用途(自動車部品やホカロンや脱酸素剤など)の説明をする毎に苦笑せざるを得なかった。

ルネ・ペターソンさん(日本法人会社の初代社長)の家へ泊まった時に、彼から「地元の新聞社に知り合いがいるのでお前の自転車旅行を載せてもらうのはどうだ?」と聞かれた。疲れてもいたので辞退したが、今思えばインタビューを受けておれば良い経験になったのに・・・・。リンショーピンで出会ったダニエル君がその後に来日した。
池袋で再会し楽しい一時を持つことが出来た。

日本ユースホステル協会の季刊誌「とらいべる」(2009年冬 Vol.20)の「お便りコーナー・読者の声」欄に今回の自転車旅行の記事が掲載された。
その記事を見たFさん(2008年8月に礼文島と利尻島で出会った人で第4回北海道8月7日と8日に載せている)から電話をもらい久し振りに話をした。これも旅の出会いの面白さだ。

ペダルを漕ぎながらよく声に出した詩がある。アメリカの詩人のサミエル・ウルマン(Samuel Ullmann)の「Youth」である。英文も訳文も覚えていて心の支えにしている詩である。
英文の抜粋:
Youth is not a time of life--it is a state of mind; <中略> Whether seventy or sixteen, there is in every being's heart the love of wonder, the sweet amazement at the stars and the starlike things and thought, the undaunted challenge of events, the unfailling childlike appetite for what next, and the joy and the game of life. <後略>   
岡田義夫氏の漢文調の訳文も素晴らしい。
上記英文の訳文:
青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。<中略> 年は70であろうと16であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。曰く、驚異への愛慕芯、空にきらめく星辰、その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰、事に処する剛毅な挑戦、小児の如く求めてやまぬ探究心、人生への歓喜と興味。<後略>

スウェーデン人ばかりでなく色々な国の人たちと出会い、涙と笑いと感動の旅でした。


スウェーデン南部の旅(2009年6-7月)


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